佐伯市は番匠川の河口地帯に開けた城下町。人口5万人。古くは佐伯氏が栂牟礼(とがむれ)城を築き、1601年に入封した毛利氏は八幡山に鶴ケ城を築いた。現在の城山は、この鶴ケ城。櫓門は江戸時代の趣を残す。“日本の道百選”にえらばれた「山際通り」には武家屋敷が残る。養賢寺、国木田独歩館が並ぶ。六月には菖蒲園が美しい。
戦前は海軍の連合艦隊がしばしば入港し、昭和9年には海軍航空隊(水上機)が置かれ、同15年には防備隊を敷いた。鶴見や高島には砲台が建設され「豊予要塞」と呼ばれた。航空隊兵舎跡には、最近、平和記念館「やわらぎ」が建てられた。
鉄道ファンにお薦めは、海軍航空隊跡に進出した工場の引込線跡を整備した「野岡緑道公園」。1300Mの遊歩道には90種類以上の樹木や花が植栽されている。ところどころに鉄道跡が…。
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<佐伯と独歩>
自然主義の文豪・国木田独歩(くにきたどっぽ・明治4年〜41年)が私塾「鶴谷学館」の講師として滞在したことでも知られる。明治26年から、わずか1年だが、こよなく佐伯を愛した。
「佐伯の春先づ城山に来り、夏先づ城山に来り、秋又早く城山に来り、冬はうそ寒き風の音を先ず城山の林にきく也。城山寂たる時、佐伯寂たり。城山鳴る時、佐伯鳴る。佐伯は城山のものなればなり」。あまりにも有名な独歩の「豊後の国佐伯」の一節だ。後に「春の鳥」等の作品で佐伯を舞台に描いている。独歩は佐伯と切り離せない。現在は佐伯観光の主役だ。
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