~線路等級と軸重~ 乙線でのD51蒸気とEF81電機
EF81の入線で気になって線路規格を調べた。鉄道省時代から国鉄に引き継がれ、一般的に使われてきたのが、甲乙丙線の呼び方。重要線から順になる。甲線の上には特別甲線がある。これが1級~4級線という表記になった。各線の軸重制限値が大まかにいえば機関車の入線条件になる。軸重は1軸の車輪がレールにかかる重さのことで、力のある幹線用の機関車ほど重い。
鉄道ファン的には(笑)…日豊線は乙線規格だから軸重14.6tのD51が走れるが、宮崎以南は条件の悪い丙線でD51は入れず、貨物も軸重の軽いC57が牽引した。全線電化後は軸重可変機能があるED76電機だからこそ丙線区間まで入線できた…という具合だ。さらに言えば、丙線だった久大線の輸送力増強のため、軸重15tだったD50の従輪を2軸化し、軸重を13.7tに軽減したD60を投入した。もっと言えば、重軌条化された鹿児島線では鳥栖までD52が重貨物を牽いてて……こんな風に使う(爆)。
入線できる機関車を、軸重で説明することぐらいで、概念は知っているのだが、詳しいことは知らなかった。
成り立ちはこうだ。1921年、鉄道を建設する時に、運輸量の少ない線区まで一律の規定で建設し、運営するのは得策でないとして、鉄道省は国有鉄道建設規定を作った。1929年に甲乙丙の3等級に線区を細分する。甲線の上には最重要の特別甲線をおく。輸送力に見合った軌道にして、コストパフォーマンスのよい路線にしよう、というわけ。1932年には丙線の基準をゆるめて、簡易線建設規定もできた。地方の鉄道建設ラッシュに対応したものだ。国鉄になり、1959年には甲乙丙の呼び方は1~4級と変わり、線路管理規定ができた。戦後、線路の整備が進んでいたことから1964年には負担重量などが改められた。
等級は年間の通過トン数と列車速度などを基準にして決められる。レールの太さ、枕木(構造や本数)、路盤厚、鉄橋など構造物の強さなどの総合値。これによって動力車の軸重制限も決められる。K値といわれた。建設時に重要になるのは鉄橋。路盤の強化はできても、鉄橋はおいそれと交換できない。将来を見越した重さに耐えられるものが設置されたケースが多い。機関車が重連が牽引した場合の荷重で計算されていた。
路線ごとに入れる機関車が違うのもそのため。軸重値とK値とは微妙に差があるらしいが、ほぼ同じと考えてよさそう。
当時は建設基準だったが、その後は管理規定という表現どおり保線整備基準。上位線ほど線路のゆがみ、ひずみの是正は厳しい。保線作業は時間も手間も費用もかかる。最近は機関車列車よりも軽い電車ばかりになり、列車本数も減れば線路へのダメージも低くなる。そんなわけで路盤や構造物の基準は1級や2級をクリアしていても保線整備の軽減のためか、3級や4級に等級を引き下げる所も出始めた。新幹線開業で鹿児島線の引き下げは著しく、最近では最高速110km/hの4級線区間もあるほどだ。(高速列車が走る区間を4級基準で保線管理して大丈夫なのだろうか)
昔と違い線路等級のイメージは混沌としてきた。宗太郎越は乙線規格(3級)で建設されたが、現在は4級線規格で管理されている。軸重制限は14t、最高速は85km/hに当てはまる。ED76は可でも、16.8tのEF81はどうなんだろう、と思ったわけだ。鉄橋など構造物が荷重可なら、速度制限をかけて、入線させるのが一般的。20パーミルの勾配区間で列車速度も60km/h。速度制限をかけるまでもないのかもしれない。EF入線は1日1往復だし、線路へのダメージも大きくならない、との判断なのかも。
線路等級と軸重から、入線機関車を考えるのファンの楽しみ。軸重16.8tのEF81が可能なら、16.5tのD52蒸気だって可能だったのだろうか?。D51やD50より力があるのは確かだが、宗太郎越の輸送力を強化できたか、というと疑問。交換駅の関係から、貨物列車の長さに制限がかかり引けるのはD51と同じ。石炭消費量がD51の5%~7%増といわれると、効率からいえばダメだろう。それ以上にEF81も1日1往復程度だから可能(多分)で1日5、6往復も入ると、保線が大変になるだろう。D52も同じ。一度見たかった気もするが…(笑)。EF81入線は、そんな夢もみせてくれるのだ。
【線路規格と軸重】
鉄道省 表記 |
国鉄表記 1959 |
軸重制限 1964 |
年間通過トン数 |
列車速度 最高/平均 |
国鉄主要線区
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特甲線 |
1級 |
18t |
2000万t以上 |
110km/h
55km/h |
東海道、山陽線 鹿児島線の一部 |
甲線 |
2級 |
16t →17t |
1~2000万t |
100km/h 50km/h |
鹿児島線 |
乙線 |
3級 |
15t |
300万~1000万t |
95km/h 40km/h |
鹿児島
日豊線、長崎線 |
丙線 |
4級 |
13t →14t |
300万t以下 |
85km/h
35km/h |
日豊線宮崎以南 |
簡易線 |
簡易線 |
11t →12t |
※JR化後、鹿児島線は重軌条化(60kgレール化等)で1級線区間が150キロに拡大する。※新幹線開業後は川内~鹿児島を4級線へ。
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【動力車の軸重】
形式 |
軸重 |
機関車重量 (炭水車込重) |
全長 |
蒸気 |
D51 |
14.63t |
78.4t (125.8t) |
19.73m |
D61※ |
13.76t |
80.2t (127.6t) |
19.78m |
D52 |
16.56t |
85.13t(136.9t) |
21.1m |
D62※ |
16.22t |
87.74t(139.7t) |
21.1m |
D50 |
14.99t |
78.14t (127t) |
20m |
D60※ |
13.73t |
81.56t(130.5t) |
20m |
9600 |
13.41t |
60.35t (94.8t) |
16.56m |
蒸気 旅客 |
8620 |
14.35t |
48.8t (73.3t) |
16.76m |
C57 |
13.62t |
67.5t (115.5t) |
20.28m |
C62 | 16.08t | 88.83t(151.1t) | 21.47m |
C59 | 16.17t | 80.25t(139t) | 21.36m |
C60※ | 15.00t | 82.9t | 21.36m |
電機 内燃 | EF81 | 16.8t | 100.8t | 18.6m |
ED76 | 14.8t~16.8t | 87t | 17.4m |
DD51 | 14t.15t | 84t | 18m |
DE10 | 13t | 65t | 14.15m |
※従台車2軸化で軸重軽減
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(雑記帳 2013-12-30 を加筆改訂 写真変更 2015-05-01)